Lunes Blafardes / Editions Après la lune

蒼ざめた月
 〔2006 - 〕

アプレ・ラ・リュヌ社 (パリ)
     コンタンポラリー・フレンチ・ノワール
オプス・デイ訴訟事件

【概説】
作家ジャン=ジャック・ルブーが06年に新設した出版社「アプレ・ラ・リュヌ」の中心叢書。ルブーはピエール・シニアックの愛好家として知られており、叢書名は『ウサギ料理は殺しの味』の原題を借用したものです。   
ルブーは90年代初頭に出版社カナーユを創設、90年代後半もバレンヌ社で「カナーユ・リヴォルヴァー」の監修を務めており、本コレクションの基本線はその延長上にあります。装丁・デザインを含め十分な準備期間をかけた仕掛けが功を奏し、叢書第1番の『死=体』が都市のポラール賞を、フラディエ作品2作が推理小説大賞/血のインク賞/SNCF賞を獲得しています。 
地力のある若手作家を優遇、知名度ではなく質重視。旧バレンヌ社系の作家(ルーシュ、コーエン、フラディエ、メストロン、ティエボー)を中心に、セリ・ノワール離脱系(フェティス、デュマル)、フルーヴ・ノワール残党(ザイ)、南仏作家(デル・パパス)と玄人受けのする作家を結集、06〜07年、動脈硬化を見せ始めた仏ノワール界に新風を吹きこんでいきます。しかし軌道に乗りはじめた所でフラディエ作品の訴訟事件が発生、08年以降の動きが止まりかけています。 

【諸データ】
【1992年】
ジャン=ジャック・ルブーがカナーユ社を創設。元々はパリ郊外(シャラントン・ル・ポン)の自宅を拠点とした自費出版用の出版社でした。この後他作家の原稿が集まり始め、ピエール・フォサールやミシェル・シュヴロン、ステファヌ・ジェフレなどのデビュー作を手がけていきます。 
 
【1995年】
バレンヌ社がカナーユ社を買収、ルブーは同社の新叢書カナーユ/リヴォルヴァーの監修者に着任。ルブー・バレンヌ社の関係は必ずしも円満良好なものではなく、幾つかトラブルが発生していたという噂も伝わってきています。本人の弁によると「3年間勤めたけれど首を切られてしまった」とのこと。 
【2000年】
叢書カナーユ・リヴォルヴァー閉鎖。ルブーはオーブ社へと移り、ル・プルプに影響を受けた新叢書「ムラール君」を開始。
【2005年3月】
ウェブデザイナーや広報を含め30人程度の協力を得てアプレ・ラ・リュヌ社を正式に立ち上げます。同社公式サイトをデザインしたのは作家フランシス・ミジオ氏でした。
【2007年5月】
宗教法人「オプス・デイ」がカトリーヌ・フラディエの小説『カミノ999』を訴える。作中の描写(69年にスペインで発生した経済スキャンダル『マテーサ事件』を扱っています)が同法人の「名誉を毀損している」と3万ユーロの賠償金を要求。アプレ・ラ・リュヌ社は裁判費用を捻出するため愛好家の支援を求める声明を発表します。 
【2007年11月】
第一審でパリ裁判所がオプス・デイの訴訟を却下。出版社宛に2千ユーロを賠償するよう命ずる。オプス・デイはこの判決を不服として抗告します。 
【2009年1月】
控訴院が第一審裁判官の判断を支持、アプレ・ラ・リュヌ社勝訴。フラディエと『カミノ999』をめぐる裁判が結審します。 

【作品】
『死=体』
シルヴィー・ルーシュ著
『最後の戦い』
シルヴィー・コーエン著
『ある父の調査記録』
オリヴィエ・ティエボー著
01: Corps-morts
/ Sylvie Rouch
[2006]

02: Dernier combat
/ Sylvie Cohen
[2006]

03: Enquête d'un père
/ Olivier Thiébaut
[2006]

『墜ちた子の怒り』
カトリーヌ・フラディエ著
『インダストリアル・ロマンス』
ローラン・フェティス著
『飼い馴らされない最後の男』
ドミニク・ザイ著
04: La Colère des enfants déchus
/ Catherine Fradier
[2006]
05: Industrielle romance
/ Laurent Fétis
[2006]
05: Le Dernier des
indomptés
/ Dominique Zay
[2006

『世界の肌の下で』
ジル・デル・パパス著
『ドゴール、ヴァン・ゴッホ、
妻と僕』
ジャン=ジャック・ルブー著
『灰の中』
アレクサンドル・デュマル著
07: Sous la peau du monde
/ Gilles Del Pappas
[2006]
08: De Gaulle, Van Gogh, ma femme et moi
/ Jean-Jacques Reboux
[2006]
09: Dans la cendre
/ Alexandre Dumal
[2007]

『作家再沈黙する』
エルヴェ・メストロン著
『カミノ999』
カトリーヌ・フラディエ著
『ハイエナ』
アルノー・ゴバン著
10: Résilience d'auteur
/ Hervé Mestron
[2007]
11: Camino 999
/ Catherine Fradier
[2007]
12: Les Hyènes
/ Arnaud Gobin
[2007]

『サンサリナ』
ニコラ・ジャイエ著
   
   
 13: Sansalina
/ Nicolas Jaillet
[2007]
     

 

【最終更新】 2009-06-10
Photo : "Voici le temps des assassins" / Julien Duvivier, 1955
] Noirs [ - フランスのもう一つの文学 by Luj, 2008 - 2010

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