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オマハの月 |
ジャン・アミラ著 |
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〔初版〕 1964年
ガリマール社(パリ)
叢書セリ・ノワール 839番 |
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La Lune d'Omaha / Jean Amila
-Paris: Editions Gallimard.
-(Série Noire; 839). -1964. |
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自分の名が死者として刻まれている。 |
ノルマンディ上陸作戦の舞台となったオマハ・ビーチ。戦死者を弔う記念碑が立っていた。大理石の前で妻と一緒に足を止める。目の高さにあった「H」の欄に目をやった。ジョージ・ハッチンス。言葉が出なくなった。 |
20年前、ジョージはこのオマハ・ビーチで部隊を脱走していた。偽の戸籍を作成してもらいフランス人「ジョルジュ・ドゥルイ」として生きてきた。楽な生活ではなかった。ドゥルイ一家が毎月口止め料を要求してきただけに尚更だった。 |
このオマハ・ビーチに戻ってきたのは亡くなった戸籍上の父ドゥルイの遺産を相続するためだった。妻は「金など要らない」と言っていたが・・・20年間脅迫され、奪い取られてきた金を取り戻したかった。 |
自分の墓を見たことで何かが変わってしまう。自分の中にいたもう一人の自分、ジョージ・ハッチンスが蘇ってくる。兵隊としての本能、戦いの本能が蘇ってくる。それが命取りになるとは…思ってもみなかった。 |
「一番長い一日」、ノルマンディ上陸作戦を再検討する形で書かれたアミラ流の歴史オマージュ。推理ドラマというより人間ドラマの要素が大きく、最後の数ページで初めて「殺人」が起こり悲劇として収束していきます。作家の歴史意識が強く出ている作品で、復刊を重ねるたびに評価が高くなっています。 |
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