幽霊に似て
〔1966年〕

 ジョルジュ=ジャン・アルノー著
     地方主義、身分詐称、整形術、金髪至上主義
ドッペルゲンガー・サスペンス

[初版] 1966年
 フルーヴ・ノワール社(パリ)
叢書 スペシャル・ポリス 543番

Tel un fantôme / Georges-Jean Arnaud
-Paris : Editions Fleuve Noir.
-(Spécial Police; 543).
-11 x 18cm. -1966.

【あらすじ】
 「甥が医学の勉強で使いたいと言っているのですが…人の頭蓋骨を売ってませんか。できれば女性で」
 夕方、セーヌ河岸の骨董屋から出てきた女。買い物を済ませ郊外自宅へと戻っていく。荷物を地下室に隠すと夕食の準備に取りかかった。夫はまた午前様。仕事場で金髪娘にちょっかいをかけているのは分かっていた。浴室の鏡に映った自分を直視する。髪の色が暗すぎる。顎と鼻も気に入らなかった。夫が離婚したがっているのも無理はなかった。再び地下室に下りていく。地下のボイラーでロースト・ビーフを焼いていく。自分の体重と同じ重さの肉を焼くのは一苦労だった。  
 1月末に計画を実行。偽造の身分証明書を作成、パリに小さな一部屋を借りていた。手持ちの宝石類を持って家を出る。髪を染め、約束の時間に整形外科医を訪れる。顔の下半分を大きく整形。オルガという地味な女は消え失せ、エディスという金髪女に生まれかわる。新聞とラジオのニュ−スには気を払っておく。田舎町で主婦が一人失踪、調査が進むにつれ夫が妻を殺した疑いが強まっていった。ある日、遂に起訴されたという速報が流れた。  
 退院。夫の裁判に顔を出しておいた。大半の証言が夫に不利に働いていた。極刑の可能性もあった。弁護士の忠告を受け、夫は犯してもいない殺人を自白。情状の酌量を狙っていた。懲役十年。判決を見届けた女は南仏に向かう。宝石類を売り払い、小さな事業を始め人生の再スタートを切った。古い言葉遣い、振舞いは消したつもりだった。しかしオルガという名の亡霊はゆっくりと蘇ってくる…  

【講評】
 不幸な境遇にあえいでいる一主婦が完全犯罪を決行、「自分を殺害し」、夫に罪を押し付けていきます。「家族、夫婦関係」を軸に罪の物語を組み立てていくのがいかにもアルノーといった感じ。とはいえ筆致はヒロインだけに加担している訳ではなく、公判でオルガがいかに「自己中心的で」「計算高い」女だったか証言が出てくるなど善悪の境界が曖昧となった世界を描き出していきます。  
 物語後半はヒロインが自宅へと舞い戻り、出獄してきた夫(刑期が5年に減刑されています)と再会を果たします。「古い私」と「新しい私」の葛藤。自分の「霊」と対峙するある種のドッペルゲンガー・サスペンスに。非常によく練られた内容で、作家代表作のひとつとして何度か再刊されていくのも納得の出来栄え。  

【最終更新】 2009-06-18
Photo : "Brute Force" / Jules Dassin, 1947
] Noirs [ - フランスのもう一つの文学 by Luj, 2008 - 2010

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