ベッポとリュリュ
ジュリア・ベネシュ著

〔初版〕 1999年
オール・コメルス社 (パリ)
叢書オール・ノワール 18番

Beppo et Lulu / Julia Benech
-Paris: Editions Hors Commerce.
-(Hors noir ; 18).
-194p. -19 × 14cm. 1999.

   

「昔々パパと娘がいたぁぁぁぁ
二人は散歩したぁぁぁぁ
優しいワニさんの中ぁぁぁ
お祭り気分で泳いだぁぁぁぁ
海に行きなとワニは言ったぁぁぁ
怪物に気をつけなってぇぇぇ
優しいワニさんとパパをぉぉぉ
食べちゃうぞぉぉぉってぇぇぇ」
 ベッポは妻を寝取った男を刺し殺す。井戸に投げこんで帰宅。妻は夕食のスパゲティを準備している最中だった。「夜外出しようか」。「ごめんね。疲れているの」。「そうですか」、一人で通りに向かう。街は音楽祭で賑わっていた。3才の少女リュリュを誘拐、車での旅が始まった。最初は少女を殺すつもりだったのだが…
 「今から僕が君のパパだからね」
 「わかってるー」
 目的地は海だった。「リュリュ2号」との出会い。「リュリュベル」との出会い。旅の途上ベッポは気にした様子もない。気にくわない「野蛮人」はナイフで消し去ってしまえばいい。少女リュリュが隣で奇妙な歌を歌いつづけている。海の匂いが近づいてきていた…
 物語を要約しても余り意味のない作品かな、という気はします。壊れた時代の壊れた子守唄、なんちゃってシリアルキラーの心象風景が延々と綴られていきます。BGMは「ワニさんの歌」。
 あまりの独創性に発表当時から「奇書」の誉れが高かった一冊。可愛らしく、切なく、シュールでナンセンス、ほのかに薄暗い大人向けのファンタジー。

Photo : "The Doorway To Hell" / Archie Mayo, 1930
] Noirs [ - フランスのもう一つの文学 by Luj, 2008 - 2010

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