アマゾン

ダニエル・ブランシャール


[初版] 2008年
ポルトスのアトリエ社 (トレレヴェルン)


Amazone / Daniel Blanchard
-Trélévern : Editions Les Ateliers de Porthos.
-302p. -15 × 21cm. -2008.


   

 「できるだけ早く息子のジャックを連れ戻して欲しいのですが」。男は机に写真を広げた。すでに小切手帳まで準備している。探偵にも断る権利があるのだという発想は無いようだった。「息子さんの居場所に心当たりは」の質問に「フランス領ギアナ」の回答。9万平米に近い南米の密林?洒落にしてはきつかった。

 空港で案内役のユーゴと顔合わせ。男は象狩り用のライフルを用意していた。「そんな大層な物が要るのかな?」、「この数日で状況が変わったんですよ」。探している男は地元の武装ゲリラ集団に拉致されて捕虜になっているそうである。

 二発の銃声。ユーゴの手元で銃が揺れた。丸太小屋の見張り番が崩れ落ちる。小屋には二人が監禁されていた。ジャックだけでない。その妹のソフィーも一緒だった。アナコンダ、ピューマ、大鹿、巨大カワウソ…熱帯の生き物たちに見守られながら4人の奇妙な逃避行が始まった。

 途上でジャックの話に耳を傾けていく。青年は父親の電話を盗み聞きしてしまい、死別したはずの母親がアマゾンにいることを知ったそうである。奇妙なのは青年が「母の形見」として大事にしていたペンダントだった。見覚えがあった。20年以上前、私が黄金探索のためこの地を訪れた時に作ってもらったペンダントと同じだった。密林のゲリラに追われながらも出来事のパズルを一つずつ組み立てなおしていく。この密林遠征に私が選ばれたのは偶然ではない。誰かが私とジャックを同時に抹殺しようと画策していた…

 探偵による失踪人探しという超古風なテーマをアマゾン横断の冒険物(電波少年や川口浩探検隊ノリです)に混ぜあわせ、現代風のスリラータッチでまとめあげた快作。ジャンル横断的な一作なのですが、最後に謎解きの手続きを踏んでいるため読後感は「デテクティヴ・ストーリー」に傾いている気がします。

 フランスの伝統的なロマン・ノワールが暗さ、悲観主義、凝った表現に特徴付けられているのと対照的に、本作は余裕綽々(しゃくしゃく)の楽観主義で最後まで貫かれています。サラサラした心地良い文章もフランス人離れしてますね。取ってつけたハッピーエンドに無理がありますが、これだけ楽しませてもらった以上贅沢は言えません。そうそう、こんな衒い(てらい)のないエンタメ作品を待っていた。07〜08年デビュー組では一番の逸材です。


Photo : "The Doorway To Hell" / Archie Mayo, 1930
] Noirs [ - フランスのもう一つの文学 by Luj, 2008 - 2010

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