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海賊
〔2008年〕 |
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ベルナール・デュフール著 |
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秘宝ハンター物語、近世大西洋海賊・海運史 |
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〔初版〕 2008年
レ・コントルバンディエ出版者 (パリ) |
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Pirates / Bernard Dufourg
-Paris : Les Contrebandiers Editeurs.
-411p. -14 x 20.5cm. -2008. |
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【あらすじ】 |
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フランス、バスク地方北部の田舎町。冷たい霧雨が振り続ける中、一軒家の前に傘を手にした人だかりができている。慌しく行き来している憲兵隊員たち。中庭に乗りこんだ救急車のランプがゆっくりと回転していた。夕刻、叔父のフィリップから「不審者がいる」の電話を受けたミゲルは半信半疑でやってきたのだが、至近距離から胸を撃たれた叔父は意識不明の状態で病院へと運ばれていた。特に裕福という訳でもなく敵を作る性格でもない。押入りの仕業だろうか。ミゲルは警官の後について現場を検分していくが、古い歴史資料の山積みになった書庫以外にとりたて荒らされた痕跡は見られなかった。犯人たちは何を探していたのか? |
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ミゲルは幼馴染の報道カメラマン、ピエール・イリゴイエンに連絡を入れた。彼女のヴェルーシュカ(cf『マフィヤ』)と伴にやってきたイリゴイエンは話を聞いていく。「サイレンサー付の銃で飼い犬が射殺されていた?」、ありふれた押入り強盗にしては念を入れすぎだった。イリゴイエンは信頼できる友人たちを呼び集め、荒らされた痕跡のひどい書庫の資料に目を通し始めていく。 |
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「1773年。サンピエール。船首楼修理用の資材購入。嵐で損傷を受けた舵部の検査」。ミゲルの先祖にあたるマルタン・ゴイエシェアは18世紀末から19世紀初頭にかけ大西洋に活動していた海賊の一人だった。資料として残された膨大な航海日誌。数十巻にのぼる資料を目に通していくと、1792年にスペインから出発した船隊が襲撃され、貴金属、宗教装飾品を含む大量の貴重品が奪われていたことが明らかになっていく。「現在価値にして…3億ドル?」 |
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ナヴァール号船長ペヨ・ダリスメンディ(バスク人)。レプルヴィエ号船長マルタン・ゴイエシェア(バスク人)。ランヴァンシヴル号船長ヤコブス・マルタンス(オランダ人)。「アルマディラの財宝」は三海賊の手に渡り、それぞれ異なった場所に隠されているようだった。「三は一を成す。宝箱は錨の先にあり」、資料に残された謎めいた言葉を元に財宝の在り処を特定していく。米ルイジアナ州の寂れた墓地、インドネシア孤島の湖、そしてバスク海岸の洞窟へ。しかし別資料から秘宝の存在を知った危険な者たちがイリゴイエンたちを先回りし、妨害工作をはじめようとしていた… |
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【講評】 |
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06年に始まった「報道カメラマン/イリゴイエンの冒険」シリーズの第3弾。仏・蘭・米から東南アジアへ。地理的枠組みを大きく動かしていく発想はこの作家の特徴であり強みでした。今回はさらに歴史軸を絡め18世紀末の海賊物語が並行して語られていきます。あちこちを旅行している感覚(デペイズマン)を味わうには格好の一冊。仏革命前後の大西洋海洋史・海運史といったものを想像することなど普段なかなかありませんので、波や風、潮の香りを身近に感じるような綺麗目の描写は大層面白く読ませていただきました。 |
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主人公イリゴイエンはアカデミーの実写部門にも絡んでいく名の知れたカメラマン.。報道エージェンシーの会社を経営。仏諜報組織とも縁が深く、バスク独立運動にも旧友たちがいる。所有している車はアルファ・ロメオ。作家の願望をあられなくすべて詰めこんだような存在で、キャラとしての現実味・生々しさは希薄。SASに通じる御都合主義も前面化しているのですが、文章のサラッとした味わいと細部に時折見られるモノマニアックな観察力が面白いので追っています。デビュー作で儚い魅力をたたえていたロシア娘ヴェルーシュカが自称「セクシ−」なお人形さんとしてしか機能していないのが惜しいです。 |
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【最終更新】 2010-01-03 |
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