HAKA カリル・フェレ著 〔初版〕 １９９８年 バレンヌ社（パリ） 叢書 アンスタンタネ・ドゥ・ポラール １４２番 HAKA / Caryl Ferey -Paris: Editions Baleine. -(Instantanés de Polar; 142). -449p. -18 × 12cm. -1997.		壁に数百枚の写真が貼られていた。 　ニュージーランド北島。フィッツジェラルド警部は２５年前に失踪した妻と娘の追憶に浸っていた。朝まで娘の部屋で過ごし、疲れた顔で署に向かう。真夏の太陽の下、人々はクリスマスを祝っていた。性器を切除された女性変死体が浜辺で発見されたのはこの日だった。 　５年前に南島でも似たような変死体が発見されていた。つながりがあるのではないか。犯罪心理学専門のアンが捜査に同行し、犯人像の割り出しに努めていく。被害者のキャロルは大学を中退後に屠殺場で働いていた。毎晩男を替えながら深い孤独を癒していた。付き合った男との会話を録音する性癖があった。交友関係の洗い出しは前進したのだが… 　原住民マオリ族から妨害が入る。バスケットシューズ姿の三人組がフィッツジェラルド、アンを襲い、戦闘歌「HAKA」の態勢に入る。事件にはマオリ内部でカリスマ的影響をほこる呪術師ジンザン・ビーが関与していた… 　女性犯罪心理学者アンを脇に配すことで英系のプロファイラー／シリアルキラーに敬意を表しているものの、作品の発想と姿勢は完璧にフレンチ・タッチ。４５０ページという大部な作品ですが最後まで緊張感が切れません。 　カドゥラの『モリツリ』と並ぶ９０年代ノワールの傑作。複雑な筋立てを苦もなく操っていく才知、安手のサディスムに走らない真っ当な姿勢…新世代ノワ−ル作家の意地が伝わってきます。最後読み終えて印象に残るのが主人公の抱えこんでしまった心の闇。深めの憂いを強調するのがノワール魂です。
Photo : "The Doorway To Hell" / Archie Mayo, 1930
] Noirs [ - フランスのもう一つの文学 by Luj, 2008 - 2010

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