イノセントX
ローラン・フェティス著

〔初版〕 1995年
ガリマール社(パリ)
叢書 セリ・ノワール 2375番

Innocent X / Laurent Fétis
-Paris: Editions Gallimard.
-(Série noire ; 2375)
-299p. -18 × 12cm. -1995.

   

 「ポルノの脚本って書ける?」
 友達からそんな相談があった。一応詩人のはずなのだが…返答に困って言葉を詰まらせたフランク。向こうが大声で笑い始めていた。「大丈夫だって。僕はホモには走らないから」
 「フランスだと市場が小さいからね」、ハードコア・ポルノで一旗揚げようとアムステルダムに乗りこんでいく。イタリア資本のAV製作会社ブリーチ・プロダクションに雇われる。馬車馬のように働き始めた。
 エロ女優ロキシーに一目惚れ。フランクは妄想に浸りながらシナリオを書き続けていく。オランダ製ハードコア・ポルノの金字塔『エリザベスの悦楽』を完成させるが…性産業の実権を握っているのはマフィア連中だった。金目当ての抗争に巻きこまれてしまう。銃声の中、マフィアの用心棒に転身した旧友ダヴィッドの姿が見えた…
 前半はアムステルダム観光(AV地獄編)なので果たして本当に犯罪小説になるのかやきもきさせるのですが、あれよというまに抗争臭が漂いはじめ後半は一気にノワール色が加速していきます。
 語り口の流麗さが素晴らしいです。最後で突然三人称から一人称に移ってしまい雰囲気が変わるのが難点。95年物のノワールでは五本指の出来栄え。今更ながら再評価を。

Photo : "The Doorway To Hell" / Archie Mayo, 1930
] Noirs [ - フランスのもう一つの文学 by Luj, 2008 - 2010

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