ツグミ猟
エルヴェ・ジャウアン著
〔初版〕1979年 ジャン・グジョン社(パリ) 叢書アングルナージュ 10番
La Chasse au Merle / Hervé Jaouen -Paris : Editions Jean Goujon. -(Engrenage ;10). -1979.
街の中心部は再開発が進み、BMWやルノーが路肩に停車していた。そこから一歩離れると風景は一変する。水道も通っていない建物が立ち並んでいる。きちんと教育を受けていない子供も多かった。中心部、周辺部の子供たちが徒党を組んで対立を始めたのも不思議ではない。二つの区画から等距離の場所に「老女の家」と呼ばれる4階建ての建物があった。どちらのグループにとっても戦略上の要所だった。現在では雑草が生い茂った中庭、こっそりとバコを吸うには最適だった。
つぐみ猟の季節が始まろうとしていた。子供たちも自分たちの「猟」に乗り出していく。
グループの中心人物、デュデュルが「銃がいるだろう」と提案し、親の部屋から旧式の銃を盗み出してきた。夜、デュデュル一団は「老女の家」に向かう。地下倉庫へ。タバコをふかし、紅一点ナヌーが小便をする音に興奮しながら夜が過ぎていく。誰かがやって来る。耳を澄ます。「この扉は開かんぞ!」、倉庫の扉を開けようとしていた。デュデュルは銃に残った弾を確かめる。
倉庫に盗品を隠そうとやってきたのはラルーシュ氏だった。安物のコニャックの匂い。「誰かいるだろう!」、ラルーシュは鉄棒でドアを突き破る。だが先に少年たちが待ち構えている。デュデュルは引き金を引いた。「正当防衛!」。死体を運んでいく。ラルーシュ氏が持ってきたジャガイモ袋が目に留まる。「何て重いんだ」、中にカメラ、絵画、長剣・・・ラルーシュが仲間と共に古物商から盗んできた盗品が詰まっていた。「宝物だ!」
全体のインパクトを抑えた代わりに物語の組み方を凝った形にもっていっています。数珠つなぎに事件が連鎖していく展開を楽しんでいるようでもあります。貧富の対立の図式は単純ですが、15年後に同じ型を用いた『溝』と比べると作家の進化、変化が浮き彫りになって面白いです。
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