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死化粧

エルヴェ・ジャウアン著


〔初版〕1983年
フルーヴ・ノワール社(パリ)
叢書アングルナージュ 74番


Toilette des morts / Hervé Jaouen
-Paris : Editions Fleuve Noir.
-(Engrenage ;74).
-186p. -1983.


   

 日曜日、深夜の住宅街。TVで映画を見終えた男が窓を開ける。男はベランダで射殺される。

 軍付属の射撃練習場、若い兵士が射撃の練習をしている中で大尉が射殺される。

 アルプス山系の水脈。ルアー釣りをしていた退役司令官が射殺される。

 ブルターニュ、女の車から下りてきた老医師が射殺される。

 ドヌール勲章に輝いた軍人たちの集まり。会場から出てきた元大佐が射殺される。

 全ては妻を「殺された」、「自殺させられた」オリヴィエによる復讐だった。回想が織り成されていく、会計士として妻娘を養っていた静かな生活。人付き合いは決して良いほうではないが…仕事場では尊敬されていた。人生がおかしくなったのは軍役の途中から。軍隊で孤立、上司からは病人扱いされ、医者から「病人を装っている」となじられ、オリヴィエの立場は悪化していく。最後は軍事裁判にかけられ、有罪を宣告され牢獄行きとなる。妻コリンヌとの手紙のやり取りは長く続かなった。女が自殺したの連絡が入る。退院後、オリヴィエの復讐が始まった・・・

 80年代ジャウアン作品で最も幻想の強い一作。回想と現在の出来事、さらに軍隊の機密書類といった文章を織り重ねて倒錯した復讐劇を綴っていきます。なのですが描写の密度が低く主人公独白もやや単調で物足りなさが残りました。暗殺場面一つ一つに意趣をこらしていたり、時制に凝った処理をほどこしたりと随所に見所はあるのですが…


Photo : "The Doorway To Hell" / Archie Mayo, 1930
] Noirs [ - フランスのもう一つの文学 by Luj, 2008 - 2010

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