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労働組合の犯罪 |
エルヴェ・ジャウアン著 |
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〔初版〕1984年
ドゥノエル社(パリ)
叢書「冷汗(シュウール・フロワッド)」
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Le Crime du syndicat / Hervé Jaouen
-Paris : Editions Denoël.
-(Sueurs Froides).
-211p. -1984.
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地方銀行のWC、便座に男がうずくまっていた。両腕をだらりと下げている。
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顧問として雇われていたリュタールの刺殺体。銀行にとって損失ではなかったが、リュタールが労組合との折衝役を引き受けていただけに経営方針に関わる恐れがあった。匿名刑事が調査を引き受け、銀行内部の確執に迫っていく。 |
銀行にも二種類の人種がいる。上下関係を大切にし、会社の調和を重んじる「仲間」。もう一方には厄介ごとをもちこんでくる「敵」。例えば労働組合の参加者たち。頭取に呼び出されたリュタールは「労働組合壊滅」に手を貸すよう特命を受ける。組合の会合(トイレットペーパーの質が悪い…)に参加したまでは良かったが・・・噂が流れるのは早かった。「リュタールには気をつけろ」のチラシが回り始める。
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リュタールから従業員用出入口のセキュリティを強化しようの提案があった。従業員がカードで出入口ロックを開閉する。アイデアは悪いものではなかった。しかし誰が出入りしたのかパソコンで見ることが出来たのはリュタール一人だった。監視されているようで気持ちいいものではない。さらにビデオカメラのチェックも始まった。ジョージ・オーウェルの『1984』ではないか、組合の批判は手厳しかった。リュタールを間に挟んだ組合、指導部の対立は全面戦争の気配を見せ始める・・・ |
ジャウアン著作で唯一「警官の調査」形式を取った一作。とは言うものの推理が絡んでくるような内容ではなく、資料を順次集めていく中で事件へと至る経緯、流れが自然に浮かび上がってくる仕掛けになっています。内部告発というほど深刻な描き方ではないですが銀行内部のパワーゲームを描く視線に手厳しいものがあって興味深く読みました。 |
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