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団地華 |
エルヴェ・ジャウアン著 |
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〔初版〕 2007年
ディアバーズ社 (プランコエ)
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Fleur d'achélème / Hervé Jaouen
-Plancoët : Editions Diabase.
- 151p. -13 X 20cm. -2007. |
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1966年、20才の誕生日にリュシアンヌから奇妙な手紙が届いた。「何で結婚したの」。駄洒落と言葉遊びの先に誘惑があった。悪い気分ではなかった。後腐れのないよう妻に手紙を見せておいた。「返事しておく?」、大学時代のリュシアンヌを良く知っている妻からの質問。「まさか」と手紙を片付けておいた。 |
それから毎年、誕生日に手紙が届くようになった。やりとりは10年、20年と続いていく。女は狭い団地暮らしから抜け出し、シェルブールで船員と同棲を始めたようだった。手紙に透けている欲望と誘惑。読むのは楽しかった。でも返事はしない。妻と二人三脚、社会的に成功し二人の子供を育てあげるのが最優先だった。 |
手紙が途切れることもあった。遅れて届くこともあった。内容から察すると病院での生活を過ごしていたようだった。「生活保護を受けている」の告白もあった。成功者、挫折者の落差は果てしなく広がっていく。 |
新聞記者の活動の傍ら、休暇を取って一冊の小説を書き下ろす。タイトルは『団地華』。大学時代のリュシアンヌがモデルだった。それほど売れた訳ではなかったが、TVの討論企画に誘われたことで一躍有名になる。シェルブールでの講演、傍聴席には老い果てたリュシアンヌの姿があった… |
1966〜97年、30年間という大きな時代の流れ、運命の絡みあいを150ページに閉じこめてみせました。微かに胸が痛むサラリとした終わり方がとても好き。純粋なノワールではありませんが、『溝』、『星に火をつけて』の後で久しぶりに「この人らしい」作品だな、という気がします。 |
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