夜のままで
〔1999年〕

ミシェル・レブル著
     地方主義(南仏)、デヴィッド・グーディス

アクト・シュド社 (アルル)
叢書 バベル・ノワール(第1期) 367番

Que la nuit demeure / Michèle Lesbre
-Arles : Acte Sud.
-(Babel noir; 367).
-189p. 11 × 18cm. -1999.

【あらすじ】
87年の夏は記録破りの暑さだった。取調室に赤のTシャツ、ひも靴姿の女性が入ってきた。マルタン警部の動きが止まった。事故で死んだ娘の面影があった。アンヌ・カルラと名乗った女。ジャーナリスト、作家の夫とともにヴァカンスで南仏を訪れている最中に今回の「事故」に巻きこまれた。マルタン警部は席を外し、水を飲み、うなじを濡らしてから戻ってくる。取り調べの開始。革命祭の夜に起こった放火事件に至る長い告白が二人を待っていた。  
警部はアンナの言葉、身振りを一つ一つ思い出していく。夫が浮気をしているのではないかとの疑い。夫との口論。朝食作りから買物まで、日常の細部に忍びこんできた違和感…夫婦に休息が必要だった。お互いを許しあう時間が必要だった。旅行代理店で「田舎風の一軒屋、栗林」を謳ったパンフレットを貰ってくる。女はシャツと水着、そして一冊の本を旅行鞄に詰めこんでいく。  
黄色い家、田舎風一軒屋を手入れしていたのはアントワーヌだった。かつてポーランド女と一緒に住もうと建てた家だった。ポーランド女のゼナが亡くなった後(殺して死体に火をつけたのはアントワーヌだった)、死者の影だけが住んでいた。夏、パリからの旅行客が滞在することになっていた。奇妙な夫婦、だがアントワーヌは次第に女の魅力に逆らえなくなっていく…  

【講評】
冒頭に引用されているのはデヴィッド・グーディス(《Retreat From Oblivion》)。主人公のアンヌが同書をヴァカンスにもっていき、取調べの後に警部が女の忘れた本を手にする一節もあります。  
深い憂鬱感、孤独癖にアルコール癖、平凡な人々が不意に垣間見せる暴力性…確かにグーディスの影響があちこちに。物語の組立てが若干ルーズなのですが良質の憂いで最後まで飽きさせません。ミシェル・レブルはこの後すぐにノワール界を離れてしまいますが、近作『小柄な散策女』(05年)と比べてもこちらのノワール寄りの作風の方が魅力的に思えてきます。本作は99年度のレストラパッド賞(Le Prix de l'Estrapade)という超玄人好みの文学賞を獲得しています。  

【最終更新】 2009-06-16
Photo : "Brute Force" / Jules Dassin, 1947
] Noirs [ - フランスのもう一つの文学 by Luj, 2008 - 2010

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