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男、それとも女。よく分からない。少年は自分の体に違和感を覚えていた。 |
母親が亡くなった後、公園で寝泊りを重ね男たちに抱かれていく。5人目に出会ったカスパーに「おかしくはないよ」と励まされ奇妙な同棲を開始。少年は名を変える。「セザリア」と。 |
カスパーがいない間に3人の男がやってくる。半時間かけ、2度ずつ、ゆっくりと犯されていく。涙が止まらなかった。数日後に3人のバラバラ死体が発見される。犯人はカスパーだった。カスパーの病死した後もネックレスは大事にしていた。刻まれている「C」の文字。2人の頭文字。そして「虐殺」、「星座」の「C」。 |
ある日赤毛の娼婦と二人で通りに立っていた。一台の高級車が停まった。二人で後部座席に乗りこんでいく。運転席に座っていたのは出獄してきたばかりのクロヴィスだった… |
クロヴィス。十年の禁固刑を終えて戻ってみると港町は様変わりしていた。魚の匂いさえ忘れていた。旧友と連絡を取っていく。昔の服、拳銃を取り戻す。17年前、リヨンで銀行強盗を決行。仲間の一人ディンゴが裏切って密告した。恨みを忘れたわけではなかった。スーパーで新しい服を買う。汚れた服は公園のゴミ箱に捨ててしまう。車で夜の町を徘徊、娼婦二人組を見つけてドアを開けてやる。セザリアだった。 |
クロヴィスとセザリア。派手な喧嘩になった。結局は探しにいく羽目に。補助席にセザリアを乗せ高速を走らせていく。犯罪者としての過去を話し始める。裏切り者のアパートを発見、ディンゴを射殺するが…奴にも家族がいた。妻と息子、厄介な証人が残される。殺すのか、生かすのか… |
枯れた味わいの長編ニ作(『ホレス・シルヴァーの指』、『湖の猿』)で注目を浴びたマルクス・マルト。深く隠していたロマンティスム全開で読み手を驚かせたのが本作。壊れた二人組の純愛模様と逃避行。新進作家の「力業」(クロード・メスプレッド)、忘れがたい一編です。 |
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