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十五分だけね
フランシス・ミジオ

〔初版〕1996年
ルピオット社(ロメール)
叢書ゼブル 3番

Un quart d'heure, pas plus / Francis Mizio.
-L'Aumère: Editions de la Loupiote.
-(Zèbres; 3).
-93p. -20 × 13cm. -1996.

   

 こっそりとアパートに忍び込んだ。金を手に高飛びしたポーランの居所をようやく突き止めたのだ(ミントキャンディのおかげだった)。ポーランは引越の真最中、顔を真っ赤にしながら一人で洗濯機を運んでいた。銃を向けて男を狙う。一発の銃声…ハズレだった。今日は僕のラッキーデーじゃなかった。
 「おやおや、クロブカ国王。ポーラン様を攻撃ですか?」
 「近よるな!」
 「復讐罪、人間が動物と違うのはこれだね」
 ミントキャンディをボリボリ噛み砕きながら近づいてくる男。抱きかかえられ、浴槽に顔を押し付けられる。グググ…
 「お前が死んだら遺産を継ぐのは俺。契約ではそうなってたな。今日でお仕舞。悲しい事故が起こって俺様は金持ちになる。クロブカ国王は王衣で転倒、浴槽に転げ落ちて蓋が閉まる。機械が自動的にスタート。なんて劇的なドラマ…。疑う奴などいないはず」
 ここで死ぬのか…諦めかけた時、玄関から「手を離せ!」と叫ぶ声が聞こえた。サーカス界の英雄ゴム男だった。柔軟な体を自在に伸ばして逃道を塞ぐ。ポーランを射殺。助かった、と思ったのも束の間。ゴム男の狙いも(洗濯機に隠されていた)札束だった。またまた命を狙われるはめに。
 「おっと、うまく筋が繋がった。この家で起こったドラマ。ポーランはうっかり「洗剤君」を呑みこんだ。お前は助けようとした。拳銃で「洗剤君」を吐き出させる。焦って撃ってしまった。ポーランは死んでしまう。絶望とパニック、お前も自殺。よもや警察も疑うまい」
 今度こそダメだ…そう思った。でも神様は僕を見捨てなかった。「待って」と飛びこんできたのは愛しの鳥女だった…
 ルピオット社をやっていたブロート氏の所にある日FAXでこの原稿が届いたそうです。即出版決定。90年代仏ノワール奇譚中の奇譚。ミジオによる笑撃デビュー作。最後まで笑いが止まりませんでした。

Photo : "The Doorway To Hell" / Archie Mayo, 1930
] Noirs [ - フランスのもう一つの文学 by Luj, 2008 - 2010