1974

アルルの淑女
〔1974年〕

ダヴィド・モルゴン
     私立探偵物、地方主義(リヨン、アルル)
郷土料理、ワイン、バイセクシャリティー

[初版] 1974年
フルーヴ・ノワール社(パリ)
叢書スペシャル・ポリス 1126番

La Dame d'Arles / David Morgon
-Paris : Fleuve Noir.
-(Spécial police ;1126)
-18 x 11cm. -1974.

【あらすじ】
 「一晩で50万旧フランを稼がないか」。数年前に知り合ったテニス選手、ピエール・ワルテルから依頼があった。今晩11時、工事現場で待機している男に封筒を渡すだけの仕事だった。封筒の中身は450万フラン分の札束。きな臭い匂いがしていた。真っ当な私立探偵なら断るのが筋だった。だが依頼人とは旧知の間柄、出来れば役に立ってあげたかった。夕食を済ませ時間より少し早めに約束場所に向かう。弱い光に照らし出され、地面に倒れている男の姿があった。ピエール・ワルテルの絞殺死体だった。  
 ピエールが住んでいたフォッシュ通りの一室を訪れる。玄関の鍵はかかっていなかった。室内に女性の姿があった。近所の住人だそうである。探偵をピエール本人と勘違いしていた。「そうそう、荷物が届いていましたよ」。小包が一つ。差出人は結婚相談所、中身は半裸女性の写真だった。  
 二つの線で調査を進めていった。ピエールの妻に会見を求めてみる。シニカルな口調の女だった。夫が死んだというのに何の感慨もなさそうだった。半月ほど前に受け取ったという匿名手紙を見せてもらう。「あなたの旦那さんはマルティーヌ・シャンパンという女性と浮気しています」。タイプ打ちの手紙は預っておいた。次いで探偵はシルドベール通りの結婚相談所に足を運んでいく。所長のエルヴェという男が出てきた。半裸のモデルがイザベルという名前までは分かったが、後は「職業上の機密事項」と追い払われてしまう。  
 事務所に戻ると驚きが待っていた。涼しそうなデコルテの服を着た若い女性が一人。セミ・ヌードの写真とは少し印象が違っている。「イザベルはモデル用の名前なんです。本名は…マルティーヌ・シャンパン」。女は先週ピエールに貸した500万旧フランの在り処を知りたがっていた。この女性は…本物のマルティーヌだろうか。探偵の直感は否と言っていた。勘を裏付けるように、イザベルの部屋で結婚相談所所長エルヴェの死体が発見される…

【引用】
 この時期、遅れてやってきた春が冬の背後に忍びこんでいく。女性たちは服を軽くしていく。脚元を見せるようになっていく。夜の険しさは和らいでいた。通行人は不意に怠け者に変わったかのように足を止め、急ぐのを止めていく。[…]
 リヨンはその本性を一瞬垣間見せる。背徳で、罪深く、皮肉屋な本性である。
 (14ページ)
 

【講評】
 70〜80年代の仏ミステリーには私立探偵の姿が見え隠れしています。マンシェットが探偵タルポンを登場させたのは72年でした(『死体収容所は満室です』)。79年にはモルジエーヴによる探偵ボーマンの創造。81年にはジャン・マザランによる「太陽の探偵」連作開始。こういった流れの中で、ダヴィド・モルゴン連作は捜査過程を重視した正統派アプローチを強みとしていました。  
 手持ちの証拠、データ類を元に一つ一つ調査を進めていく。警察とは付かず離れずの距離関係を維持。銃器は持ち歩かない。必要とあらば同業者と連絡をとって共同調査の形に持っていく…マンシェットやモルジエーヴの描く探偵がアウトローの側に寄っている、そしてマザランのパロディー色を考えると、穏健で着実、地元密着型でユーモア感覚も欠けていない、市民の側に立ったフランス人探偵モルゴンというキャラクターが現地で意外な人気を得たのも分かる気がします。
 物語後半は探偵の預った紙幣を巡った駆け引きに発展。ピエールの情婦マルティーヌの正体が明かされていき、リヨンから250km離れた街アルルがドラマ決着の舞台となっていきます。

【最終更新】 2009-06-18
Photo : "Brute Force" / Jules Dassin, 1947
] Noirs [ - フランスのもう一つの文学 by Luj, 2008 - 2010

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