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浜辺の町。通りすがりの美形青年に口説かれた。モードは嫌とは言わなかった。一晩の関係では終わらなかった。翌日電話で「ニースでSM系パーティーが」の誘い。女は断らなかった。建物の一室、女はプレイ中の殺人現場を目撃してしまう。翌日、助けを求めて兄に電話した直後、女は喉を掻き切られた姿で発見される。膣にヘロイン入りのビニール袋を押しこまれていた。 |
兄マルタンは報道写真家としてアフガンのカブールを訪れていた。妹からの電話を受けた後、知人の老大佐アントワーヌに手配してもらいニース直行を試みる。手遅れだった。「モードが死んだ」の報せに呆然としているマルタン。アントワーヌは自身のネットワークを駆使してSMパーティーの殺人者を特定、車で拉致を計り、銃を突きつけて男の告白をテープに録音していく。 |
SMパーティー、麻薬密輸を仕切っている大物が動き始めていた。暗殺者が召還される。マルタン、アントワーヌ、そしてモードの親友アンナ。3人の口を封じるよう命令が下りる。殺し屋は録音テープを受け取った警官を射殺、アントワーヌの車を追っていく。しかし大佐の読みが一枚上手だった。ホテル一室で暗殺者を捕獲、指令を出した男との交渉を試みる… |
モスコニ久々のノワール系新作。『ワイン庫の滓だけが』(97年)から10年待たされました。救いようのない絶望と冷たさに満ちていたあの作品から音沙汰が無く心配していたのですが愛弟子プイに尻を叩かれて重い腰を上げたようです。 |
この作家は悲劇を扱わせると比類のない名手、初期作で何度もシェークスピアを引用しているのは伊達ではありません。出だしの布置はありふれているので展開を予想しながら読んでいったのですがことごとく外されました。途中から登場する人格破綻者の殺し屋ペドロ君が良い味を出していて、後半の一番おいしい役どころを掻っ攫っていきます。叢書スュイット・ノワールではスロコンブの『くたびれ損の骨折り儲け』と並ぶ一本勝ちの出来栄え。タイトルはハメットの『ダイン家の呪い』(仏題:Sang
Maudit)に掛けてあります。 |
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