アトーチャ駅、3月11日
ベルナール・ウストリエール著

〔初版〕 2005年
トランスボルドゥール社 (マルセイユ)
叢書ジアロ・ポラール

Atocha / Bernand Oustrières
-Marseille: Editions Transbordeurs.
-(Giallo Polar).
- 160p. -20 ×13cm. - 2005.

   

 土曜、幼馴染のマリアンヌに電話を入れた。別な約束をキャンセルしてまで食事に付きあってくれた。「君はね、自分から一度逃げ出してみた方がいいと思うのよ」。女は精神分析家医だった。「休職届けを準備してあるの。サインして頂戴。明日高校に送っておいてあげる」
 主人公はレンタカーを借りて日常の脱出を試みる。高速に乗って南下、国境を越えリスボンに向かう。一人だと思っていたが…間違いだった。マリアンヌの元患者、危険な男が追ってきていた。手にはナイフが一つ。リスボンでの襲撃を逃れ、主人公はマドリッドに向かう。
 アトーチャ中央駅。午前7時半、高校生の笑い声がしていた。直後に爆発音が聞こえた。一瞬真っ暗になった。3月11日、マドリッドでの同時多発爆破テロ。怪我を負った主人公は看護婦のイザと知り合いになる。
 爆破テロ事件のTV報道に見覚えのある男が写っていた。ナイフを手にした男はマドリッドまでやってきていた。イザの尽力で主人公はマドリッドから離れようとするのだが・・・
 主人公による自分探しの物語、ストーカー風の追跡物語、さらに04年に起こったスペインでのテロ事件を交差させた越境の物語です。追跡物にしてはスリルが欠け、テロを描いている割には扱いが軽め、やや中途半端な印象は残ります。サラリとした綺麗な描き方で嫌いではないのですが。

Photo : "The Doorway To Hell" / Archie Mayo, 1930
] Noirs [ - フランスのもう一つの文学 by Luj, 2008 - 2010

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