天使の地獄
シャンタル・ペルティエ著

〔初版〕 2005年
ファイヤール社(パリ)
叢書ファイヤール・ノワール

L'Enfer des anges / Chantal Pelletier.
-Paris: Librairie Althème Fayard.
-(Fayard Noir).
-241p. -22 ×14cm. -2005.

   

 実の父とは今まで顔をあわせたことがなかった。名前を久しぶりに聞いたのは「カナダで射殺体として発見された」という電話だった。パリ郊外に住んでいたジョルジアに連絡が入った。死体脇のガレージにヘルス・エンジェルらしき文言がペイントされていた。
 カナダへと向かう。合衆国の国境の近くに父の家があった。ジョルジアは父の知人に質問を重ね、人となりを想像していく。ヘルス・エンジェルに憧れ、六九年、オルタモントの悲劇を目の当たりにしていたこと。愛していた女性をキリスト教の原理主義セクトから救おうとして失敗したこと。飲酒運転中に自動車事故を起こし、同乗していた女性を死なせてしまったこと…
 それだけではなかった。父は合衆国への密入国を手助けしていたようだった。70年代以来の友人のネットワーク上でコカインとヘロインの密輸を手がけていた。父の死がヘルス・エンジェルの仕業だと簡単には断定できなくなってきた。
 父の道筋を逆に辿っていく。国境を越える。ノース・キャロライナへ。父の隠した麻薬の収益を追って殺し屋が追ってきているとは予想していなかった…
 モーリス・レス警部シリーズを一旦手放したペレティエ新作。登場人物がアクティヴに動いてくのがペルティエの魅力の一つですが、今回もケベックからノースキャロライナまで魅せてくれます。物語全体が漠としていて消化不良感が残ってしまうのが残念。表紙も良くないな、と思っていたらいつの間にか差し替えられていました。灰羽連盟みたいです。これはこれで変なの。

Photo : "The Doorway To Hell" / Archie Mayo, 1930
] Noirs [ - フランスのもう一つの文学 by Luj, 2008 - 2010

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