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セーヌ流し |
フレッド・ヴァルガス著 |
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〔初版〕 2002年
ヴィヴィアヌ・アミィ社 (パリ)
叢書「薄暗い小道」
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Coule la Seine / Fred Vargas
-Paris: Editions Viviane Hamy.
-(Chemines nocturnes).
-115p. -20 × 13cm. -2002. |
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02年に新作発表はありませんでしたので、この短編集が愛好家への唯一の贈り物になりました。97〜00年に発表された3篇をまとめたもの、いずれもアダムスベルグ警視を主人公にしています。どれも細部に趣向をこらした良い作品でした。冒頭に置かれた「救いと自由」はル・モンド紙での初出時に813短編賞を獲得しています。 |
「救いと自由」 |
パリ五区、大通りのベンチで老人がオリーブを噛んでいた。何処からともなく拾ってきたフロックコート掛けをベンチ脇に置き、正面の警察署を出入りする人々を観察していた。他の警官が「公共の場所で」と苦い顔をしているにも関わらずアダムスベルグ一人がどこ吹く風で笑い飛ばしている。手元には匿名の脅迫状が一通。「人を殺しましたよ。救いと自由」で終わる謎の手紙だった。部下は「悪ふざけでしょう」と相手にしなかったが…警視には確信があった。どこかで殺人が行われていた。事件は大通りの老人とも結びついていく… |
「荒くれ者の夜」 |
窓から光の花束が見えた。クリスマスだった。警察署に数人の男が拘留されている。一人は英国紳士風。路上で寝ているところを連れてこられたばかりだった。アダムスベルグ警視は男と喋り始める。「ハンガーを貸してくれ」、規則だから駄目だと言っているのに男は譲らなかった。3日後、セーヌ川で溺死体発見。事故かと思われたが、アダムスベルグは殺人だと直感していた。しかし捜査は行き詰まってしまう…。「ハンガーを貸してくれ」、また留置所から声が聞こえた。「貸してくれたら謎を解く鍵を教えてあげる」。警視は部下に命じてハンガーを取りにいかせた… |
「5フラン硬貨」 |
スーパー用の車輪付き買物カゴを押して男が歩いていた。このカゴには「ロバのマルタン」の名前が付いていた。一個5フランでスポンジを売っていたのが…。今日はまだ5個しか売れていない。商売上がったりだった。一台の車が脇を通り過ぎていく。ヘッドライトの先にコード姿の女が見えた。車から数人の男が降りてくる。三発の銃声…倒れている女が見えた。逃げ出そうと思ったが…ロバのマルタンを置いていく訳にもいかなかった。警官がやってくる。アダムスベルグという名前だそうだった…
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