ネストール・ビュルマ対CQFD
〔1959年オンエア〕

レオ・マレ原作
     ラジオ、第二次大戦、コラボ問題
ネストール・ビュルマ、私立探偵

〔オンエア〕 1959年1月19日
「ミステリーの名手」
RTF局
監督:ピエール・ビヤール

Nestor Burma contre CQFD (extrait) / Léo Malet
"Les Maîtres du mystère"
le 13 janvier 1959.
Radiodiffusion-télévision française (RTF).
Réalisation : Pierre Billard.


【試訳】
リディア
「さっきの話は嘘だったんです。ヴィクトール通りではちょうどバルトンの部屋から出てきたところでした。私は…あの人の奥さんの妹に当たります」
ビュルマ
「ジャンヌ・バルトンの妹さん?」
リディア
「えぇ。姉はバルトンの刑が確定した後で離婚、人生をやり直しはじめました。真っ当な人と再婚して今では子供も一人、田舎で静かに暮らしています。バルトンは姉がどこに住んでいるか知らなくて。先日《エルマ&ドゥニーズ》の出口まで私を捕まえにきたんです」
ビュルマ
「何曜の話?」
リディア
「月曜です。事件の…事件の前日でした。姉の住所は教えないつもりだったのに…あの人は”良い計画があるんだ”って。”考える時間をあげようか。明日僕の部屋に午前11時までに来なかったら君の上司に告げ口してあげる。大騒ぎになるだろうね”って」
ビュルマ
「なるほど」
リディア
「アパルトマンまで行ってノックしても返事がなくて。扉は閉まっていませんでいた。ドアを押したら…バルトンが死んでいるのが見えて、死んでいるのが…」
 

【原文】
Lydia: ... Je vous ai menti. Boulevard Victor, je sortais bien de la chambre de Barton. Je suis... je suis la soeur de sa femme.
Burma: La soeur de Jeanne Barton?
Lydia: Oui. Elle a obtenu la divorce après la condamnation de Barton.... Elle a refait sa vie. Elle a marié un honorable et a un enfant. Elle vit en province. Barton ignore où, il voulait savoir. il m'est tombé dessus l'autre jour à la sortie de "chez Herma et Denise"
Burma: Quel jour?
Lydia: Lundi, la veille... la veille du drame. Je n'ai pas voulu lui donner l'adresse de Jeanne. Il m'a dit qu'il était le bon plan, ce qu'il me laissait le temps d'une réflexion, mais qu'il me ferait un scandale chez mes patrons si je n' étais pas chez lui, le lendemain à onze heures.
Burma: Hum...
Lydia: Je suis allé, je frappais... et il n'a pas répondu...et... la porte n'était pas fermée, je l'ai poussée... Et j'ai vu Barton mort...mort...
 

【あらすじ】
 1942年パリ。ヴィクトール通りで警報が鳴り響いている。独軍による空襲。避難壕に身を潜めた市民たち。中の一人が探偵ネストール・ビュルマだった。 
 飛行機の音が遠ざかっていった。防空壕を出るとアパルトマン前に警官が群れていた。「見世物じゃないぞ」、警官の一人に追い払われる。奥から「彼は入れてやってくれ」の声がした。顔なじみのファルー警部だった。階上には男の射殺死体。至近距離から放たれた2発の7.65mm口径。空襲の混乱に紛れて行われた殺人劇。銃声を聞いた者は誰一人いなかった。 
 被害者の名はアンリ・バルトン。1938年に列車強奪事件を引き起こしたテベノン一党の一人で、本人はリーダーを密告し極刑を免れていた。
 翌日、事務所に出社。秘書エレーヌが目を上げる。「所長、昨日来客が一人…」、女が言いかけた途端にドアの呼び鈴が鳴った。名刺には「雑誌CQFD編集長、エマニュエル・シャブロ」の文字。自信満々の様子で応接椅子に座りこんだ男。「知人がね、あなたの動きを気に入らないと言っているんですよ。話を聞いてもらえないならゲシュタポに過去をばらしてあげましょうか」。ビュルマは男を追い払う。脅迫に屈するつもりは無かった。
 ファルー警部に隠しておいた話があった。事件前後、ビュルマは犯行現場のアパルトマンから急ぎ足で立ち去っていく女性とすれ違っていた。調査を開始。女は洋装店《エルマ&ドゥニーズ》デザイナーのリディアだと判明する。連絡を受けて事務所にやってきた女。「バルトンなんて男は知りません」、女の言葉が嘘なのは分かっていた。同日深夜、今度はリディアからビュルマ自宅に電話がかかってきた。「話したいことがあるのですが…今大丈夫ですか」、「明日事務所で」、「今すぐに…お邪魔しても構いません?」

【補足】
 仏探偵小説の開祖レオ・マレによるビュルマ物の第2作。「CQFD」は定義の証明の最後に用いられる「かくて証明されたり」の略語・記号ですが、本作ではパリで暗躍する地下出版雑誌のタイトルとして使用されています。採録したのは探偵宅を訪れたリディアの告白場面。ビュルマ役は渋目で張りのあるオジサン声、リディアの方は舌足らずな甘い声。ルノワール監督の『十字路の夜』に出ていた女優ウィンナ・ ウィンフリードの喋り方にも似ています。
 原作小説にあった観察力、パリ戦下の景色までは反映されていませんが、ラジオドラマにはラジオ独特の魅力があります。半世紀前の音源でも全く古びて聞こえない辺りが本物の証明でしょうか。個人の耳による採録で何箇所か怪しい部分あります。間違いその他ありましたらご一報いただけると嬉しいです。

Photo : "The Seventh Victim" / Mark Robson, 1943
] Noirs [ - フランスのもう一つの文学 by Luj, 2008 - 2010

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