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『グリフュ』(連載劇画)
〔1977-78年〕 |
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ジャン=パトリック・マンシェット(原作)
& ジャック・タルディ(画)共著 |
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BD、私立探偵 |
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〔初版〕1977〜78年
スカール社 (パリ) |
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Griffu / Jean-Patrick Manchette & Jacques Tardi
-Editions du Square.
-27 x 33 cm. -56 p. -1977-1978. |
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朝8時半。郊外の大きな町の駅にいた。必要な道具一式はキオスクで買っておいた。調書代わりの一文を書き上げていく。ベレッタと一緒に包んでおいた。包みは荷物置き場に預けておく。受取証を入れた封筒を自分宛に投函。自分自身に手紙を書くのは分裂症患者と私立探偵にはよくある徴候だった。 |
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【あらすじ】 |
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深夜、男は車の助手席で煙草をくゆらせていた。運転していたのは女だった。壁際に車を停め、二人で車の屋根によじ登って壁を乗り越える。天窓から無人の事務所に侵入。三段キャビネットの鍵はそれほどてこずらせなかった。「書類」はすぐに見つかった。だが書類を受け取った女は「じゃあね」と天窓を閉じる。駆け降りていく足音が聞こえた。最初から分かっていたことだった。昨晩、「自分の書類を取り返したいの」と現れた女、リュース・ミネッタが2500フランをちらつかせた時から分かっていたことだった。 |
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事務所を離れようとした瞬間4人の男に組み伏せられ、たこ殴りにされる。「ジェラール・グリフュ。法律顧問/債権回収…?」。財布を取られたのは痛かったが自分の命を守るのが先決だった。隙を見て逃げ出し、這々の体で自室に辿りつく。傷口を消毒、額に絆創膏を貼るとすぐに家を出た。女に聞いた住所が本物だとは思っていなかったが…驚きだった。確かにリュースは友人と一緒にアパルトマン一室を間借りしていた。人形に隠されていたリュースの日記を預って部屋を辞した。 |
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女の日記から動きを読もうとする。リュースは不動産絡みの大スキャンダルを引き起こそうとしていた。「都市建設センター(OCUC)」を操っている議員アルシンボルト、その失脚を狙う歓楽街のベテラン・ママ…ゆっくりと駒が揃っていく。だが敵の動きはその駒を一つずつ消し去っていく… |
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【解説】 |
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1977年、パリに拠点を置く出版社スカールが劇画・漫画出版に取りかかり、「週刊漫画」という雑誌を公刊しています。この創刊号(77年10月)から27号(78年4月)にかけて連載されたのがマンシェット&タルディによる『グリフュ』でした。 |
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ジャック・タルディは60年代末に劇画家デビュー、やや鬱系のダークな画風で高い評価を獲得しており、マンシェットの方も新世代ノワール作家として活躍中。ほぼ同世代(マンシェットが4つ年上)、価値観にも共通点の多いこの二人が70年代末に合流していったのは必然だったといえます。 |
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物語はファム・ファタル風の探偵劇として始まり、土地開発をめぐるスキャンダルを起爆剤として当時の様々な社会層(歓楽街ピガール、左派系新聞社編集部、アラブ人コミュニティー…)を描き出し、最後痛ましい結末へとなだれこんでいきます。「物語の型としてやや古びている」の批判もありますが、地の文や会話に伺えるマンシェットの冴え、さらにタルディの圧倒的な画力(看板やポスターの情報量が並ではないです)が相まってこの作品を一種別格の出来栄えにしていると思います。 |
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