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夜に浮かぶ白い石が
ジャン・ティリオン作

〔初出〕作家ブログ
「蒼ざめた顔、暗い目線」
06年5月20日付


4歳の時にクメール・ルージュに身柄を拘束された友人のカンボジア女性ポーリカとの会話より。


眠っていたの。それから目を覚ましたの。夜はゆっくりあっという間に過ぎていった。頭上に大きく広がっているゴキブリの羽を想像していた。よく覚えてる。あれは4才だった。皆が一斉に寝息を立てていた。一人だけ、藁で作った小さな部屋の反対側で咳をしている人がいた。ママの寝息が人一倍大きく聞こえていた。私を抱きしめるように眠っていたから。悲しそうに微笑んでいる月に思いをめぐらせてみた。パパの顔に似ていた。私たちを残して、他の男たちと一緒に働きに向かう時のあの微笑みに似ていた。

人が多すぎたせいで藁小屋で全員は寝れなかった。他の小屋でも同じだった。どこで眠るかは命令一つで決まる。あぶれた人たちが夜空の下に身を横たえていた。白い石の夜、小屋を出たすぐの所、頭上には屋根なんてなかった。雨季でなければどうってことはないのだけど。他の人たちの行列と一緒に来たのだけれど、父が時間をかせいでゆっくりと歩いていた。理由が分かったのは後になってだった。他の人を先に行かせようとしていた。私とママ、それからパパ。3人で外の塀と建物の間で眠れるようにしようしていた。他に誰もいないようにって。

全員熟睡していた。疲れ果てていた。聞こえてくるのは蛙の鳴き声、コオロギ、誰かの叫び声が時々、たまに銃声。あの晩ではなかったけれど。お腹は空っぽだった。夕方に出てくる穀物スープでは体がもたなかった。こっそりと草の根、虫でも食べないと。パパとママは何か見つけると全部私のところに持ってきてくれた。手に掴んだ蟻をゴマでもかじるように噛み締める。バッタも食べてみた。ひとりだったら捕まえるのは絶対無理だった。羽をもいだ蝶々、それから芋虫も。芋虫はとてもおいしかった。他にはミミズ。土を落とすために唾で洗ってから。生きたまま食べさせられた。パパがそうしなさいって。病気になりませんようにって。

頭上に見えた白い石、あれは月ではなかった。本物の月は地平線に近い所、枝の先に見えていた。私たちを真昼のように照らし出していた。私は寝たふりを続けていた。何だろうって。でも4才だと4才で分かることしか分からない。白い石と一緒にパパの顔が見えた。パパは眠ってなかった。頭上にパパの顔があった。本当は隣で横になっていないといけなかったのに。座っているのも立膝も駄目なはずだった。誰かに見られたら、ふと怖くなった。見張りの連中は夜に誰か動くのを嫌がっていた。体格の大きな子供たちが私たちを見張っていた。血も涙もない子供だった。誰か一人がパパを見つけたら銃の尻で殴りつけにやってくるはずだった。翌朝、それとも次の日、トラックに乗せられて別な場所に運ばれてしまうのかもしれない。他にもそういった人たちがいたのだけれど、二度と会うことはなかった。代わりに別な人たちが歩いてやってくる。

本来ママは一緒にいないはずだった。女の人は別な収容所だった。あの収容所で何をしているのか誰も知らなかった。子供だけが男性用の収容所に残ってもいいことになっていた。ママが一緒にいたのは私の姉ですと偽ったためだった。小柄で綺麗な顔、パパはうまく見張りを騙し通した。ママは胸のふくらみを隠すために帯を硬く引き締めていた。

昼間、私たち子供たちは畑や田んぼで働かされた。男たちは土を運ぶ作業をさせられていた。朝、昼、夜と「アンカ」、「至高組織」の話ばかり聞された。仕事の鬼にならないといけなかった。「アンカ」のために喜んで身を捧げないといけなかった。毎回授業の終わりは歌になる。捕虜、格子模様のスカーフを巻いた見張りが一斉に声を合わせていく。「夜は怖くない。昼は怖くない。風も嵐も怖くない。雨も病気も怖くない。アンカのおかげ、アンカ、アンカ…」

パパはお医者さんだった。でも技術者だという話になっていた。昔のように眼鏡をかけるのは止めていた。賢そうに見えてしまうからって。眼鏡は初日に処分してしていた。頭上にパパの姿が見えた。両手に石を掴んでいた。こちらを見て微笑んでいるようだった。本当は泣いていたのだった。歯を食いしばっていた。心配で目を開く。パパ、寝ていないのがばれちゃうよ。怒鳴ってくるよ。殴りつけてくるよ。私の目は言葉以上に雄弁だった。パパは分かってくれた。不安を分かってくれたようだった。石を手にしたまま横になる。すすり泣いていた。私を抱きしめる。見張りが下を通り過ぎていった時、父は体を強張らせていた。私も身動きしなかった。

大分時間が過ぎて全てが終わった後、あの時私を殺そうとしていたのだと教えてもらった。あの白い石で頭を割ってしまおうと。同じようにママも眠っている間に。そして原っぱに駆け出していく。大声で叫んでみる。銃で殺してもらえるはずだった。起きていた私が邪魔をしたのだった。手遅れになる前に踏みとどまることができた。妻と娘を地獄から解き放つ勇気は足りなかった。

この話を聞いてから毎夜わたしは泣きながら目を覚ます。夜に浮かんだ白い石が私を見つめ続けている。


Dans la nuit, une pierre blanche / Jan Thirion
paru dans son blog
"Visages blêmes, regards sombres"
le 20 mai 2006.



] Noirs [ - フランスのもう一つの文学 by Luj, 2008 - 2010