仔猫:三部作
〔2002年〕

ジャン=ユーグ・オペル著
     麻薬密売、オンライン型経済テロリズム

リヴァージュ社 (パリ)
叢書 リヴァージュ・ノワール 418番

Chaton: trilogie / Jean-Hugues Oppel
-Paris : Editions Payot & Rivages. -(Rivages/Noir; 418).
-346p. 11 × 17cm. -2002.

【あらすじ】
庭で深呼吸。ヴァランシア警視の目の前に郊外の一軒家が聳えていた。緑の多い閑静なベッドタウン。庭の背後には死体が倒れている。これで十体目の遺骸だった。虐殺劇。ただし庭の死体だけが両手と頭部を切断されていた。遺体が身に付けていた身分証明書はどれも偽造。一軒家地下に隠されていた実験室。純度95%のヘロインが見つかった。麻薬密売。対立するグループの抗争だろうか。ヴァランシア警視は捜査に取り掛かっていく。  
被害者の数を見れば犯人は一人ではないだろうと予想ができた。使われた凶器も一つではない。だが警視には納得がいかなかった。凶行が成されたのは月初めの水曜日。防火サイレンの試験放送が行われる日で銃声を消すにはうってつけだった。緻密な準備に死体の演出。背後に深い怨念が見て取れる、「犯人は一人かもしれない」、警視はそう自問し始めていた。  
偽造身分証明証はブルージュ製だった。犯行に使われた拳銃もかつて仏-ベルギー国境の現金輸送車強奪に使われていた形跡あり。犯行現場となった一軒家の持主もブリュッセルに拠点を持つ不動産会社。どれもベルギーとつながっている。警視はベルギーへと向かう。一方で自分を「仔猫」と名付けた男がパソコンを前に作業を続けていた。復讐の本番はこれからだった…  

【講評】
第一部の段階でテロリスト「仔猫」は断片的に登場してきます。犯人探しではなく警視対「仔猫」の駆引きを楽しんでいく作品になるでしょうか。中盤から物語が大きな動きを見せはじめ、「仔猫」による復讐が国家規模での壊乱を目的としている事実が明らかになっていきます。旧友ハッカーの助力を得てコンピューターウィルスを開発、株相場に大規模なトリックを仕掛けていく場面が見せ場になるでしょうか。  
前作『カルタゴ』で大統領暗殺未遂事件を扱ったのが転回点となりました。オペルの想像力は社会のマクロ/ミクロコスモスを犯罪劇で横断していきます。初期作に見られた表現レベルの実験は影をひそめ、良い意味での大衆文学性が前景化、リヴァージュ社を代表する作家としての貫禄を示しました。  

【最終更新】 2009-06-16
Photo : "Brute Force" / Jules Dassin, 1947
] Noirs [ - フランスのもう一つの文学 by Luj, 2008 - 2010

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