物置
〔2003年〕

クリスティアン・ルー著
     児童虐待、近親相姦
娼婦殺し

セルパンタ・プリュム社 (パリ)
叢書 セルパン・ノワール

Placards / Christian Roux
-Paris : Editions Serpent à plumes.
-(Serpent Noir).
-191p. -13 × 20cm. -2003.

【あらすじ】
「ままがかえてきた こわくなかた たたかれなかた
おはよう きょうはげんきだった
ままはなきはじめた ほんとのおととくれよんを
ものおきになげた どあをしめた
よるはごはんをもてきてくれなかた なんじかわからなかた
よるだた こわかた」
 
ヤン市市警。ユスターシュ警部の電話が鳴った。電話の先で男が泣いていた。ユスターシュは救急車を呼んでから現場に直行する。全身を切り裂かれ臓腑を剥き出しにした娼婦死体が転がっていた。アパートの物置には中央が窪んだオレンジ色のクッション、パン屑、ペットボトルの水が置かれ小便の匂いが漂っていた。数本の毛が落ちている。犬の毛ではない。人間の子供だった。犯行を目撃したのではと思われる少年の捜索が始まった。  
警察より先に死体を発見したのは近所アパートに住んでいたアリスだった。物置で少年の残した手帳を発見、自室に持ち帰って読み始める。片言で書かれた虐待の記録だった。アリスの脳裏に父親の姿が甦る。幼少時、妹のヴァレリーと一緒に犯された記憶が甦る。母もおそらくは知っていた。母の目に憎しみの光があった。仕事にも行かず手帳を読み進めていくアリス。ユスターシュ警部がアリスの存在を知って連絡を取ろうとしていた…  

【講評】
4つの視点、4つの異なった文体の寄木細工として組み立てられていく近親相姦と幼児虐待の物語。犠牲者と犯罪者の境界は曖昧で単純な勧善懲悪にはなっていません。結果として救いようのない現実を救われないまま放り投げたような感触になっています。正直、第2作でここまで沈潜化するとは思っていませんでした。  
処女作『強奪』で発揮されていた言葉の魔法は本作でも生きているのですが、大きな物語がうねっていくダイナミズムは消えたかな、と。ここにあるペシミスティックな感傷もこの作家の持ち味、頭では分かりつつも正直微妙な第2作。  

【最終更新】 2009-06-16
Photo : "Brute Force" / Jules Dassin, 1947
] Noirs [ - フランスのもう一つの文学 by Luj, 2008 - 2010

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