マリリンを殺せ

ロラン・サドヌ


〔初版〕 2008年
通りの端出版社(ヴァンヴ)
叢書 「黒通り」


Marilyn's killer / Roland Sadaune
-Vanves : Edition du bout de la rue. -(Rue noire).
-176p. -14×20cm. -2008.


   

 両手首に手錠をはめられた女性の絞殺死体。冬だというのにサクランボ模様をあしらったワンピース姿。パリ東部、似たような状況で発見された被害者はこれで3人目だった。メディアが「サクランボ柄ワンピースの殺し屋」で騒ぎ始めていた。

 同時期、歴史雑誌に依頼を受けた女性ルポ記者アレキサンドラがカリフォルニアを訪れていた。TVは「シュワルツネッガー大統領選出馬か?」の話題で持ちきりだった。予定していたインタビューを終えてホテルに戻ると匿名の手紙が残されている。「パリ19区に住むラルフとコンタクトを取れ。至急」。謎めいた文言が一つ。手紙を残した男は直後、喉を掻き切られた死体姿で発見されていた。

 知人に預けていた飼い猫のピローが飛びついてくる。パリに戻ったアレキサンドラ。謎の手紙の指示に従い19区を訪れる。老人は早朝ジョギングに出かけた後で馴染みのバーに立ち寄っていた。コカコーラを手に何か言いかけた男。ようやく決心がついたようだった。「お嬢さん、マリリン・モンローをご存知ですか?」。女優暗殺に関わる未公開情報、アレキサンドラの手元に爆弾が一つ。そしてサクランボ柄のワンピースもまたモンローの遺作『荒馬と女』に結びついていた…

 シュワルツネッガーとモンローを並べた表紙にJFKネタ。相当の地雷臭が漂っていますが敢えて踏んでみました。見覚えのある設定だと思ったらポラルシーヴ(ミステリー資料庫)ですね。アレキサンドラ=クロエ・ブルジェアドです。サドヌが寄稿する予定だったのは知っていましたが叢書消滅と共に立ち消えになったとばかり思っていました。原稿は完成していて登場人物の名前だけを置き換えて出版したようです。

 ハリウッド史やケネディ家絡みの面白い裏話が盛りこまれている訳でもなくシリアルキラー物としても浅薄。サドヌ作品としては失敗作だと思います。それでも「ページターナー」としての力量に驚くべきものがあって2時間強で一気に読みきりました。脱線が少なく、読み手を楽しませようとする基本姿勢が清いのかな、と。次作はワクワクが止まらない超田舎スリラーの大作でお願いします。


Photo : "The Doorway To Hell" / Archie Mayo, 1930
] Noirs [ - フランスのもう一つの文学 by Luj, 2008 - 2010

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