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Hervé Jaouen

エルヴェ・ジャウアン
　〔1946 - 〕

【活動叢書】アングルナージュ（第1期）、同第２期
カレ・ノワール、冷汗、リヴァージュ･ノワール他

【略歴】

１９４６年ブルターニュ地方のカンペール生まれ。少年時代から執筆活動を試みるも一旦は挫折。ブルターニュの地方銀行に就職。７０年代前半にセリ・ノワールを発見し、犯罪小説への傾倒を深めていきます。

一週間の休暇を取って完成させた『赤い花嫁』の原稿がアレクス・ヴァルーの目に留まり、１９７９年、新叢書アングルナージュの一番として公刊されます。剥き出しの暴力（拉致、レイプ、処刑）が生々しく言語化され、巧みなドラマツルギーで構築されたこの物語は「爆弾」となり、（後にマンシェットが批判する）ネオ・ポラールのマトリクスとして以後語り継がれていきます。

４作目の『死河岸』からは記述の密度を高め、より手のこんだサスペンス形式に移行。同作は８１年の仏サスペンス大賞を獲得。この後叢書「冷汗」へと移っていき、一作ごとに舞台を変え（ブルターニュ、スイス国境、アメリカ）、小道具を変え（川釣り、耐久マラソン、漁師）、語り口を変えながらジャウアン流悲劇の次の形を模索していきます。

８７年に銀行を退職。執筆に専念しノワール復帰作となる『コネマラ・クィーン』と『地下病棟』を発表。この２作はジャウアン・ノワールの完成形であり、特に後者、幻視色（魔女）を加えた重厚な『地下病棟』によって推理小説大賞作家へと辿りつきます。９０年代は純文学や旅行記執筆が主となり次第にノワールから離れていくのですが、それでも時折『溝』のような佳作を発表して愛好家を喜ばせてくれました。０２年には出版社ラ・シャペルを設立、入手の難しくなっていた初期作復刊を手がけています。

【諸データ】

ジャウアンと知り合いになる大分以前の話なんだけれど、『赤い花嫁』を初めて読んだ時に作家自身がそんな人間なんだろうなって想像していた。背丈が１９２センチくらい、足がやたら大きい。後ろが膨らんだ帽子の似合いそうな顔、バンダナを風になびかせていたりして。「ご承知のように」ってジャウアンが書いていた。「何世紀間とまともな食物にめぐり合えず、ブルターニュ人は図体ばかり大きくなってしまった小人なのである」。ところがどっこい会ってみたら聡明な人物だった。目が皮肉に輝いている。言葉ひとつひとつには重みがあった。

ピエール・マニャン、『赤い花嫁』再版「序文」
１９８６年、ジャン・ピコレック社　

『赤い花嫁』は決して道徳的とはいえない。誰より早く作家自身が認めていることである。ジャウアン曰く、「登場する人物はおぞましい連中ばかり、善人悪人に関わらず卑怯者で醜さときたら大差なし。物語ときたら露骨で残酷、猥褻だった。でも作品がポルノ扱いされるのはごめんだね。使っている言葉が露骨だといっても所詮辞書に載っている単語じゃないか」と。

ジャン=ピエール・ドゥルー、「仏地方主義の犯罪小説」
ポラール誌８号、４４ページ、１９９２年　

９０年代の犯罪小説は原点回帰になると思う。
〔…〕電車-仕事-ベッドの代わりに電車-ＴＶ-ヴァカンスになっているのだけれど、そこに戻っていくわけだ。書く素材がない？そんなことはない。この手の主題は古びるものじゃない。黎明期ロマン・ノワールだってこれを描いていた訳で。シモナンのような硬派な小説がこれから再評価されていくんじゃないだろうか。あれは時代や国境とは関係がないからね。刹那に消費されていく犯罪小説は消えていくだろう。白と黒（純文学とノワール）は混ざりあっていく。　

　「８０年代と９０年代で犯罪小説を書くのは
何が違いますか」への回答
ポラール誌第２号、９１年

【長編小説　(ロマン・ノワール系のみ)】
	赤い花嫁
	エルヴェ・ジャウアン著

	〔初版〕１９７９年ジャン・グジョン社（パリ）叢書アングルナージュ　１番
	La Mariée rouge / Hervé Jaouen -Paris : Editions Jean Goujon. -(Engrenage; 1). -184p. -1979.

	ツグミ猟
	エルヴェ・ジャウアン著

	〔初版〕１９７９年ジャン・グジョン社（パリ）叢書アングルナージュ　1０番
	La Chasse au Merle / Hervé Jaouen -Paris : Editions Jean Goujon. -(Engrenage; 10). -1979.

	少女と釣り人（『バグパイプで泣かないで』)
	エルヴェ・ジャウアン著

	〔初版〕１９８０年ジャン・グジョン社（パリ）叢書アングルナージュ　２３番
	La Petite fille et le pêcheur / Hervé Jaouen -Paris : Editions Jean Goujon. -(Engrenage; 23). - 156p. -1980.

	死河岸
	エルヴェ・ジャウアン著

	〔初版〕１９８１年フルーヴ・ノワール社（パリ）叢書アングルナージュ　３４番　サスペンス大賞1982
	Quai de la fosse / Hervé Jaouen -Paris : Editions Fleuve Noir. -(Engrenage; 34). - 184p. -1981

	干潮
	エルヴェ・ジャウアン著

	〔初版〕１９８３年フルーヴ・ノワール社（パリ）叢書アングルナージュ　６１番
	Marée basse / Hervé Jaouen - Paris : Editions Fleuve Noir. -(Engrenage; 61). - 216p. -1983.

	死化粧
	エルヴェ・ジャウアン著

	〔初版〕１９８３年フルーヴ・ノワール社（パリ）叢書アングルナージュ　７４番
	Toilette des morts / Hervé Jaouen - Paris : Editions Fleuve Noir. -(Engrenage; 74). - 186p. -1983.

	労働組合の犯罪
	エルヴェ・ジャウアン著

	〔初版〕１９８４年ドゥノエル社（パリ）叢書「冷汗（シュウール・フロワッド）」
	Le Crime du syndicat / Hervé Jaouen -Paris : Editions Denoël. -(Sueurs Froides). -211p. -1984.

	陰物語
	エルヴェ・ジャウアン著

	〔初版〕１９８６年ドゥノエル社（パリ）叢書「冷汗（シュウール・フロワッド）」
	Histoire d’ombres / Hervé Jaouen -Paris : Editions Denoël. -(Sueurs Froides). -1986.

	南の犬
	エルヴェ・ジャウアン著

	〔初版〕１９８７年ドゥノエル社（パリ）叢書「冷汗（シュウール・フロワッド）」
	Les Chiens du sud / Hervé Jaouen -Paris : Editions Denoël. -(Sueurs Froides). -199p. -21 x 14cm -1987.

	熱波
	エルヴェ・ジャウアン著

	〔初版〕１９８７年フルーヴ・ノワール社（パリ）叢書アンブルナージュ
	Coup de chaleur / Hervé Jaouen -Paris : Editions Fleuve Noir. -(Engrenage). -1987.

	アメリカ郵便配達人の息子
	エルヴェ・ジャウアン著

	〔初版〕１９８９年ペイヨ社（パリ）
	Le Fils du facteur américain / Hervé Jaouen -Paris : Editions Payot. -1988.

	コネマラ・クィーン
	エルヴェ・ジャウアン著

	〔初版〕１９９０年ドゥノエル社（パリ）叢書「冷汗（シュウール・フロワッド）」
	Connemara Queen / Hervé Jaouen -Paris : Editions Denoël. -(Sueurs Froides). -1990.

	地下病棟
	エルヴェ・ジャウアン著

	〔初版〕１９９０年ドゥノエル社（パリ）叢書「冷汗（シュウール・フロワッド）」　推理小説大賞1991
	Hôpital souterrain / Hervé Jaouen -Paris : Editions Denoël. -(Sueurs Froides). -327p. -23cm. -1990.

	アンブリュンヌのフローラ
	エルヴェ・ジャウアン著

	〔初版〕１９９１年ドゥノエル社（パリ）叢書「冷汗（シュウール・フロワッド）」
	Flora des Embruns / Hervé Jaouen -Paris : Editions Denoël. -(Sueurs Froides). -1991.

	ハンニバル氏、１２の部屋
	エルヴェ・ジャウアン著

	〔初版〕１９９２年ストック社（パリ）
	Les 12 chambres de monsieur Hannibal / Hervé Jaouen - Paris : Editions Stock. -150p.-1992.

	ハリケーン、水鳥襲来
	エルヴェ・ジャウアン著

	〔初版〕１９９３年ドゥノエル社（パリ）
	Ouragan sur les grèbes / Hervé Jaouen - Paris : Editions Denoël. -341p. -21 x 14 cm. -1993.

	負債者
	エルヴェ・ジャウアン著

	〔初版〕１９９４年ストック社（パリ）
	Les Endetteurs / Hervé Jaouen -Paris : Editions Stock. -1994.

	溝
	エルヴェ・ジャウアン著

	〔初版〕１９９５年ドゥノエル社（パリ）叢書「冷汗（シュウール・フロワッド）」
	Le Fossé / Hervé Jaouen -Paris : Editions Denoël. -(Sueurs Froides). -138p. -1995.

	星に火をつけて
	エルヴェ・ジャウアン著

	〔初版〕１９９６年ドゥノエル社（パリ）叢書「冷汗（シュウール・フロワッド）」　ポピュリスト賞1996
	L’Allumeuse d’étoiles / Hervé Jaouen -Paris : Editions Denoël. -289 p. -1996.

	銀行家アベルの挑戦
	エルヴェ・ジャウアン著

	〔初版〕１９９７年ドゥノエル社（パリ）
	La Tentation du banquier Abel Chicart / Hervé Jaouen - Paris : Editions Denoël. -263p. -1997.

	団地華
	エルヴェ・ジャウアン著

	〔初版〕２００７年ディアバーズ社（プランコエ）
	Fleur d'achélème / Hervé Jaouen. - Plancoet : Editions Diabase. - 2007.

【短編（集）】
	扉を閉めてくれてありがとう
	エルヴェ・ジャウアン著

	〔初版〕１９９９年ドゥノエル社（パリ）
	Merci de fermer la porte / Hervé Jaouen -Paris : Editions Denoël. -(Sueurs Froides). -1999.

【最終更新】 2009-06-11

Photo : "Un Témoin dans la ville" / Edouard Molinaro, 1959

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